昭和・平成・令和の“新生活家電セット”を比較してみた
――時代が変われば、家電も変わる。暮らしの価値観の記録。
① 時代ごとの「新生活家電セット」
◆ 昭和の家電セット(1970~80年代)
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カラーテレビ(あるいは白黒テレビ)
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冷蔵庫(冷凍機能は簡素で霜取りは手動)
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二槽式洗濯機(脱水槽が別)
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ガスコンロ(マッチ点火の時代も)
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扇風機
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ラジカセ・電気こたつ(家庭によっては)
あの頃の新生活は、“電化製品を持つこと”そのものが夢でした。家電量販店もまだ少なく、家電はデパートや商店街で買いそろえるのが一般的。家具調のテレビ、どっしりとした冷蔵庫、タイル張りの台所に鎮座する洗濯機――すべてが「家族の一員」のような存在だった気がします。
“手で洗濯していた時代”から“機械が助けてくれる時代”へ。家電は、人々の暮らしをほんの少し、やさしく変えていったのです。
◆ 平成の家電セット(1990~2010年代)
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薄型テレビ(地デジ移行の波にのって)
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冷蔵庫(多段収納+省エネ)
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全自動洗濯機(すすぎ→脱水まで自動)
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電子レンジ(オーブン・グリル機能付き)
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IH炊飯器(もしくはマイコン式)
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サイクロン掃除機
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ノートパソコンやプリンター(必要に応じて)
家電量販店の「新生活応援セット」はこの時代に登場しました。生活の立ち上げに必要な家電を、まとめて買える“パッケージ化”された便利さ。ワンルームの狭いキッチンに並ぶ、ミニ冷蔵庫と電子レンジ。無印良品のようなシンプルなデザインも台頭し、「家電は個性を主張しない方がよい」という美意識が広がっていきます。
平成は、物の豊かさから、“暮らしのバランス”を求めた時代だったのかもしれません。バブルが弾け、ローンと節約と再就職。そうした現実のなかで、家電は“無駄を省く工夫の象徴”となっていきました。
◆ 令和の家電セット(2019年~現在)
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AI冷蔵庫(省エネ・静音・自動製氷)
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ドラム式洗濯乾燥機(タオルがふわふわに仕上がる)
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ノンフライヤー or 多機能電子レンジ+トースター
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ロボット掃除機(アプリ連携、自動ゴミ収集)
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空気清浄機 or 加湿器(花粉・ウイルス対策)
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スマートスピーカー(音声操作で家電と連携)
もはや「生活を補助する道具」ではありません。令和の家電は、“暮らしをデザインするパートナー”です。
働き方改革、テレワーク、物価高、猛暑、花粉、パンデミック。社会の複雑化が進む中で、家電には「安心」や「快適」までもが求められるようになりました。
家電は“黒子”から“舞台の主役”になったのです。
② 変わりゆく時代背景と価値観
◇ 昭和:家電が未来だった
あの頃は、家電そのものに「希望」が詰まっていました。
カラーテレビで東京オリンピックを見て、冷蔵庫に入ったアイスを家族で分け合い、洗濯機の回る音に「文明」を感じた日々。
家族はまだ“みんなで一緒にいるもの”という価値観が当たり前で、ちゃぶ台を囲んでテレビを見ながら食事するのが日常でした。高度経済成長と共に育った家電は、“夢のような暮らし”への切符でもあったのです。
バブルの頃には家電も一気に華美になりました。リモコン、CDコンポ、家庭用ビデオカメラ。そこにあるのは「豊かさ」そのもの。しかし、その後、景気の崩壊と共に、時代は静かに次の章へと移っていきました。
◇ 平成:現実を受け入れ、賢く選ぶ時代へ
「家族=一緒に住むもの」から「家族=離れていてもつながるもの」へ。
結婚しない選択、晩婚化、一人暮らしの増加。核家族化はますます進み、“自分にとっての快適さ”が家電選びの基準になりました。
就職氷河期、リーマンショック、震災。平成という時代は、「豊かであること」が当たり前ではないと、多くの人が知った時代でもありました。
家電は「ムダを省き、ちょうどよく」を追求する方向にシフトしていきます。
◇ 令和:暮らしを“整える”ことが主役になった
時代はさらに静かに、けれど確実に、価値観を変えました。
モノを増やすより、削ぎ落とす。派手さより、静けさ。競争より、調和。
家電は今や、生活のノイズを取り除き、“自分らしくいられる時間”を取り戻すための道具に変わりました。
自動で掃除し、空気を清浄し、料理の手間を省く。忙しく、複雑な現代において、「なにもしない時間」や「気にしない快適さ」を与えてくれる存在です。
③ 令和にふさわしい「新生活家電セット」とは
では、今この令和の時代にふさわしい“家電セット”とは何か。
それは、おそらく“すべてをそろえること”ではなく、「自分の暮らしに本当に必要なものを、丁寧に選ぶこと」ではないでしょうか。
◆ 令和のおすすめ家電セット(実用+心地よさ重視)
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冷蔵庫:音が静かで、野菜が長持ち。暮らしに寄り添う冷蔵庫。
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ドラム式洗濯乾燥機:干す手間のない快適さは、一度知ると戻れない。
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ノンフライヤー+電子レンジ:手軽でも、しっかり“美味しい”。
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スティック掃除機 or ロボット掃除機:出かけている間に床がきれい。
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空気清浄機 or 加湿器:目に見えない「安心」を買う時代。
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スマートスピーカー:暮らしを声で動かす新しいパートナー。
◆ 最後に:あなたにとっての“新生活家電”とは?
昭和は「憧れ」
平成は「現実」
令和は「選択」
家電はいつの時代も、静かに人の暮らしと心のあり方を映し出してきました。
あなたにとって、いま必要な家電とは何でしょう?
便利さの向こうにある「心地よさ」や「安心」、
そして「自分らしさ」を叶える家電が、きっとあるはずです。
あなたなら、どんな家電を選びますか?