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ラジカセってやつはすごいやつだった!今では考えられない多機能ぶりと懐かしの魅力

実は結構スゴかった!昔のラジカセの話

「ラジカセ」。この響きを聞いて、すぐにあの独特の見た目やカチャッと鳴る操作音、テープが巻き戻るあの「ウィーン」という音が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

いまや音楽はスマートフォンやサブスクで聴くのが当たり前。Bluetoothスピーカーでワイヤレスに再生し、録音もアプリ一つで済んでしまう時代です。でも、ほんの少し昔、家電といえば“物理ボタンの塊”だったし、音楽を聴くにも、録るにも、「手と頭を使う」必要がありました。

その象徴が、ラジカセです。


ラジカセの誕生と名前の由来

「ラジカセ」って、正式には「ラジオカセット」の略。つまり、「ラジオも聴けるし、カセットテープも再生できる機械」というシンプルなネーミングなんですね。今のスマホみたいな“全部入りガジェット”のはしりと言えるかもしれません。

このラジカセ、誕生は1968年とのこと。そう、実は今年で57歳(2025年現在)。すでに還暦間近のベテラン選手です。

私が初めて自分専用のラジカセを手にしたのは小学生の頃。それはもう、ちょっとおしゃれな外観で、丸っこいデザインに銀色のライン。まさに「マイ・ガジェット」って感じでテンションが上がったのを覚えています。

↑これはもう最新と言っていい(笑)ラジカセですよ。

 

けれど、それよりもっと印象深いのが、父が使っていた“いかにもラジカセ”な一台。

何色なの?って色で。ごつくて、無骨。ボタンもゴツゴツしていて、片手で持つにはちょっと大きすぎる重厚なボディ。それが当時のラジカセのスタンダードでした。


ただの音楽プレーヤーじゃない!?謎のインプット端子たち

でも、子供のころは気づかなかったんです。この無骨なラジカセ、実は「ただの再生機」じゃなかったことに。

私が特に驚いたのが、ある日ふと見つけた“謎の穴たち”。マイク入力、AUX入力、音声OUT…。

「これって…何?」と当時の私は疑問に思いましたが、調べてみると――。

なんと、自分でマイクをつないで、さらにAUX端子に別の音源をつなげば、自分の声+音楽を“同時に”録音できるんです!つまり、セルフレコーディングが可能!

これって、今でいう“宅録”とまったく同じこと。あの頃、パソコンもDAWソフトもなかった時代に、ラジカセ一台で“デモテープ”が作れてしまうなんて……ほんとにすごい技術だったんですよね。


2デッキラジカセの魅力とは

さらに、ちょっと高級なラジカセになると「2デッキ仕様」でした。

これ、どういうことかというと、カセットテープを2本同時にセットできるんです。そして、片方で再生しながら、もう片方に録音できる。つまり「コピー」ですね。いわゆるダビング。

今でこそデータのコピーなんて一瞬ですが、当時は“リアルタイム”でしかできませんでした。でも、それがまた楽しかったんですよね。A面からB面に移すときの緊張感、うまく録れてるかな?というワクワク感。友達から借りたテープをこっそりダビングして、翌日「ありがとう!」と返す、そんな小さな冒険がありました。


僕のラッパー時代とラジカセ

実は高校時代、一時期「ラッパーになりたい」と思っていた時期がありました。

本格的な機材なんてもちろん買えません。けれど、父のラジカセがすべての“スタジオ”でした。レコードプレーヤーからコードを引っ張ってきてAUXにつなぎ、マイクでラップを吹き込み、カセットに録音する。

そんなDIYのレコーディングが、僕の「音楽との付き合い方」だったんです。

途中で雑音が入ったり、ボリューム調整が難しかったり、救急車が近所を走るとサイレンの音が入ったり・・・、ミスって録音し直したり。でも、そのひとつひとつが今となっては大切な思い出。音楽って、もっと生々しくて不器用なものだったなあと、あの頃の自分を懐かしく思い出します。


配線のジャングルと、手作りのスタジオ

当時、部屋の中はまさに“線だらけ”でした。

スピーカーのコード、マイクのコード、電源ケーブル、アンプの接続……。今ならBluetooth一発で解決するようなことを、あの頃は一本一本、確認しながら繋いでいたんですよね。

でもそれが不思議と楽しかった。説明書を読んだり、試行錯誤したり、接触不良でイライラしたり……。けれど、音が鳴ったときの喜びはひとしお。あの頃に培った「機械に対する理解力」は、今でも役に立っていると感じます。


スマートの時代に、あえて思い出す“アナログのぬくもり”

もちろん、今の時代はスマートです。

スマホ一台で音楽も動画も、通話も録音もすべてこなせる。しかも画質も音質も圧倒的にキレイ。すごい時代です。

でも、ふと思うんです。あの頃の“不便な時代”のほうが、なんだか温かく、楽しかったんじゃないかって。

「どこにマイクをつなぐか」「このコードは何に使うのか」「録音するにはどうすればいいのか」――そんな小さな工夫の積み重ねが、ワクワクの源だった。

ボタンを押す「カチッ」という手応え、テープが回る音、録音ランプの赤い光。そういう“フィジカルな体験”が、アナログ家電の魅力だったんだと思います。


あの時代があったから、今がある

ラジカセは、今ではすっかり“レトロ家電”の仲間入りをしています。若い人からすれば、「え?それ何に使うの?」というリアクションも珍しくありません。

でも、あの時代を知っている人ならわかるはず。ラジカセがどれだけ自由で、クリエイティブで、そして楽しい存在だったか。

今は便利なツールが山ほどあります。でも、たまにはあの頃のように「不便を楽しむ」っていう感覚を思い出してみてもいいのかもしれません。

スマートな時代にこそ、ラジカセのような“ちょっと不器用な相棒”を思い出して、少しだけほっこりしてみる――そんな時間も、悪くないですよね。


あなたの家にも、押し入れの奥に眠っているラジカセがあるかもしれません。もし見つけたら、ちょっとだけ電源を入れてみてください。カセットを入れた瞬間に、思い出の扉が「カチャッ」と音を立てて開くかもしれませんよ。